勉強会の趣旨の1つ「知識を深める」ことから、
「正しい論理」を知ることが大切であることをお伝えしたいと思います。
【1.前提】
知識を2つに分けると、「理論」「論理」に分かれます。
理論とは、考えのことで、単なる知識のことをいい、
論理とは、考え方のことで、発想のことをいっています。
(哲学や論理学でいう論理とは異なる意味で使っています)
【2.論理のうまい人は得をしている】
論理的な人と聞くと、どういう人を思い浮かべますか?
多くの人は、「物事を順序だてて話せる人」をイメージすると思います。
物事を順序だてて話せる人は、得をしています。
たとえば、仕事のことを考えてみましょう。
自分にはどうしても通したいプロジェクトがあるとします。
これを上司からGOサインをもらうにはどうすればいいか?
答えは簡単です。
プロジェクトが通るように順序だてて話せばよいのです。
人間関係を円滑にする上でも論理的な人は得をしています。
誰かともめた時に順序だてて考えれる人は、もめた相手と話し合い、
どうしてこうなったのか原因を探り、解決することができます。
逆に、順序だてて考えず短絡的な思考の持ち主は、もめることが多くなるように
思います。
【3.論理の性質】
論理は非常に面白い性質を持っています。
それは「一見つながりようのない2つのことを結びつけることができる」という
ものです。
例えば、風が吹けば桶屋が儲かる。
風が吹くことと桶屋が儲かることは一見のつながりもないように思えますが、
論理で詰めていくと、実はつながります。
実際に詰めてみましょう。時は江戸時代です。
1.大風で土ぼこりが立つ
2.土ぼこりが目に入って、盲人が増える
3.盲人は三味線を買う(当時の盲人が就ける職に由来)
4.三味線に使う猫皮が必要になり、ネコが殺される
5.ネコが減ればネズミが増える
6.ネズミは桶をかじる
7.桶の需要が増え桶屋が儲かる
ね、つながりました。
サイエンスの分野でも「バタフライ効果」という似たようなことがあります。
バタフライとは蝶のこと。
「中国で蝶が羽ばたくと、それによってアメリカでハリケーンが起きる」という
ものです。
一見何の関係もなさそうですが、有り得ないとは言い切れません。
【4.論理の罠】
そんな性質があるから、間違った論理を使うと大変なことになります。
ある数学者の話です。
彼は次の式を使って神の存在証明をしました。
0= 0 + 0 + 0 +・・・
={1+(−1)}+{1+(−1)}+{1+(−1)}+・・・
= 1+{(−1)+1}+{(−1)+1}+{(−1)+・・・
= 1+ 0 + 0 + 0 +・・・
= 1
「無から有が生まれた! これは神の存在を示す式である」
と言って狂喜乱舞したといわれています。
これは少し説明が必要ですね。
ここでいう神は宇宙を創造した神を指します。
当時、神は何もないところ(無)から生まれたという発想が常識となっていまし
た。
この式は、無(0)から有(1)が生じたことを証明したものだから、
「神の存在証明だ!」と喜んだそうです。
この「0=1」という式を導く途中で、誤った論理を使っています。
ですからこの式は、神の存在証明を表す式でも何でもないのです。
次は、思い込みによる論理によって科学の進歩が遅れたという話。
ガリレオ・ガリレイは、望遠鏡を自作しています。
遠くに見える山も間近に見える。
「これでみんなを驚かせてやろう!」
そう思ったガリレイは、知り合いの科学者を自宅に招きます。
望遠鏡を覗き込んだ科学者は絶賛し、ガリレイを褒め称えます。
ここである科学者が「せっかくだから月を見てみよう」と言いました。
夜になり、望遠鏡を覗き込み、月を見ました。
すると、科学者は先ほどとは手のひらを返し、
「月にあんなデコボコしたものはない!」
と怒って立ち去ってしまいました。
これはどういうことか?
デコボコとは月のクレーターのことです。
当時の常識では
「天は神の住む国である。
神の住む国は完璧である。
完璧だからキレイであるはずだ」
となっていました。
ですから、望遠鏡を使ってデコボコした月を見て、科学者たちはこう言いました
。
「望遠鏡は地上のものを見るときは非常に役立つが、
天を見るときは全く役に立たない代物である」と。
常識という思い込みによって、誤った論理が使われてしまったのです。
このような誤った論理によって、科学の進歩は停滞したという話です。
【5.結論】
誤った論理を使わないのは難しいですし、正しい論理を知ることも難しいのは事
実です。
しかし、正しい論理を知って使わないと、
自分を傷つけるだけでなく、周りも傷つけてしまう諸刃になってしまいます。
正しい論理を身につけれるように、心がけてもらえたらと思います。
【6.余談】
正しい論理か誤った論理かは別として、自分の論理は正しいのか疑ってかかると
いいと思います。
たとえば、「楽しいから笑う」ということが常識になっていますが、
この論理も正しいとは限りません。
脳科学に進歩によって「笑うから楽しい」ということが証明されています。
他にも「休めば疲れが取れる」と思っている人がほとんどだと思いますが、
「休むから疲れる」という事実も生理学で証明されています。
自分の論理は正しいのか疑ってかかると論理の幅が広がり、
新たな一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。
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【こぼれ話】
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論理と理論の違いを話すのはとても難しいので、割愛させてもらいました。
日常で使う分には、この違いは、考えと考え方の違いと思ってもらって構わない
と思います。
厳密には、今回発表した論理は、理論に含まれるものです。
詳しいことが聞きたい人は個人的にお願いします。
他にゼノンのパラドックも話したかったですね。
なんせ私は数理論理学専攻でしたから。
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